銀歯を使う治療とは

虫歯になり歯を削る治療を行った後によく使われるのが「銀歯」です。
銀歯は硬くて頑丈なため、食べ物を噛んですりつぶす役割を果たす奥歯や食べ物を噛みちぎる時に使う前歯によく使用されます。(前歯の場合は表面がプラスチックで裏側や土台が銀歯になります)
また、保険が適用される素材のため患者様の負担も抑えることができます。
そのため、お口の中に銀歯が入っている方はとても多いでしょう。
しかし、頑丈な素材である銀歯の治療を行ったとしても、そこから虫歯が再発してくるケースもあります。
せっかく治療を行ったのに虫歯になってしまうのは何故でしょうか?
また、虫歯の再発ではないのに痛くなる時があるのは何故でしょうか?
これらは銀歯ならではの理由がありますので、今回は銀歯の治療を行った歯が痛くなる原因についてご説明いたします。
なぜ銀歯が虫歯になってしまうのか

銀歯の治療を行い、数週間から数か月した後に「治療した銀歯が痛くなった」という経験をした方はたくさんいらっしゃると思います。
せっかく頑張って歯科医院に通い治療を行った歯がどうして虫歯になるのでしょうか?
実は銀歯の治療を行った歯と残っている自分の歯との境目には、わずかですが隙間ができます。
歯磨きなどのケアが不十分だとその隙間に歯垢が付着し、そこからジワジワと虫歯になっていきます。
そして銀歯の下にある歯を溶かしていき、新たな虫歯となってしまうのです。これを「2次虫歯」と言います。
「銀歯を装着したのに磨く必要はあるのか」と聞かれることもあります。
確かに銀歯は金属のため虫歯になる事はありませんが、残っている部分はまだ自分の歯なので、磨き残しなどがあると虫歯になってしまいます。
特に隣り合う歯との境目には注意が必要です。
食べカスなどが落としにくく歯垢が溜まりやすい場所なので、デンタルフロスや歯間ブラシなどでしっかりとケアをするようにしましょう。
この自分の歯と銀歯の「境目」に着目すると銀歯の劣化も忘れてはいけません。
固くて頑丈な銀歯ですが永久的に使える訳ではございません。お口の中は実はとても過酷な環境です。
熱いスープ、冷たい水、柑橘類に含まれる酸など日々様々なものが入ってきます。
銀歯の寿命は5年から8年を目安に考えておくとよいでしょう。
では銀歯の劣化とは具体的にどういったことを言うのでしょうか?
それは「銀歯の錆」と「接着剤の劣化」です。
・銀歯の錆とは
先ほども申し上げた通りお口の中の環境はとても過酷です。そのため酸化をおこし少しずつ錆びてしまいます。
錆が起こるとその部分と自分の歯との間の隙間が大きくなるため、虫歯になりやすくなってしまいます。
保険は適用できませんが、同じ金属であれば金歯を使用することで錆びるというリスクをかなり下げることができます。
・接着剤の劣化とは
銀歯を装着するとき、自分の歯と銀歯をくっつけるために歯科専用の接着剤を使用します。
お口の中の環境次第ではありますが、接着剤が溶けることにより自分の歯と銀歯の間に隙間が出来てしまいます。
これを可能な限り小さくするために歯科医院では精度を高め接着剤を薄くする努力をしています。
次に「歯茎が痩せる」ことによる銀歯の虫歯についてご説明いたします。
銀歯を被せる治療を行った場合、銀歯の部分は歯と歯茎の境目まで覆います。
歯茎は加齢による衰え、歯ぎしり食いしばりなどで過度な力が加わることにより痩せていくことがあります。
すると歯茎で隠れていた自分の歯の根っこが露出してしまいます。
歯の根っこは虫歯になりやすいので特に注意が必要です。
銀歯の下の虫歯は気付きにくい

歯科医院に治療に行くと、問診のあとにレントゲンを撮られると思います。
銀歯を被せている場合、金属はレントゲンを通さないため、内部まで詳しく見ることはできません。
レントゲン写真で確認できるのは歯の根っこからになります。
そのため、銀歯で覆われている内部が虫歯になっていたとしても気付くことが困難なのです。
また、銀歯を被せる治療を選択するという事は、虫歯かかなり進行していたという事です。
この場合、歯の神経を取っていることが大半です。
神経を取った歯は痛みを感じないので、虫歯菌によって歯が溶かされたとしても気付きません。
歯科医院に行きレントゲンを撮った時に、痛かった歯とは別のところにある、銀歯の治療を行っていた歯の虫歯を見つけることもあります。
それくらい見つけにくいものなので、歯科医院での定期検診にはマメに通い、早い段階で見つけることが大切です。
歯の一部分だけ銀歯の治療を行った場合

今までの説明では1本の歯を全体的に銀歯で覆う「被せ物」としての銀歯を取り上げてきました。
しかし、銀歯は歯の一部分を銀歯にする治療もございます。これは「詰め物」というジャンルになります。
詰め物を行った銀歯の場合、被せ物の治療を行う必要のある虫歯よりも進行は軽度です。その為、神経を残すことがあります。
銀歯の虫歯の進行の仕方は被せ物と同じく、自分の歯と銀歯の隙間に歯垢が付着し、そこからジワジワ進行していきます。
神経が残っている場合は痛みを感じることがありますので、被せ物の銀歯よりも虫歯の発見は早くなるでしょう。
ただし、虫歯になるとその部分を削らないといけないので、だんだんと自分の歯が小さくなったり、新たな銀歯を作らないといけない手間とコストがかかります。
その為、こまめなケアは怠らないようにしましょう。
また、銀歯は自分の歯よりも硬いので、自然にすり減ることがありません。
噛み合せが強かったり歯ぎしりがあると、それによって歯が微妙に動き、部分的に当たりが強いところが出現し、噛み合う側の歯が痛くなることもあります。
銀歯を装着してしばらくは注意深く様子を見るようにしてください。歯科医院での調整は、縦、横と単純な動きしか確認ができません。
そのため、食事の時など複雑な動きをした場合に干渉が起こることがあります。気になった場合、すぐに歯科医院に相談しましょう。
さらにこのことは「歯茎の痩せ」を助長することがあります。
当たりの強い歯は、力を逃がすために横に揺れます。すると、結果その周りにある歯茎が刺激を受けて痩せてしまいます。
そうすると、だんだん歯茎で隠れていた自分の歯の根っこ(象牙質)が露出してきます。その露出した部分は歯の頭の部分(エナメル質)よりも虫歯になりやすいので特に注意が必要です。
また、知覚過敏ともなりやすいです。
この防止には、すり減ってくれるハイブリッドタイプでの修復が有効です。
虫歯になっていないのに銀歯が痛い場合
治療した銀歯が痛くなる場合、必ずしも虫歯になっているとは限りません。
「噛み合せが強い」「装着した銀歯が高い」などの理由で痛みとして感じることがあります。
すると歯の根に負担が掛かるため過敏に反応をしてしまいます。
そのまま放置していると歯の根が破損してしまう恐れがあるので、すぐに歯科医院に行き調整をしてもらいましょう。
また、銀歯は自分の歯よりも硬いので、噛み合せが強かったり歯ぎしりがあると、噛み合う側の歯が痛くなってしまうこともあります。
銀歯を装着してしばらくは注意深く様子を見るようにしてください。
まとめ
銀歯の治療を行った歯が虫歯になるという事は決して珍しいことではございません。
銀歯の治療を行う程の虫歯があったという事は、お口の中の環境が悪いからです。
銀歯にしたからといって、その部分はもう虫歯にはならないという事ではございません。
銀歯の治療を行った歯は自分の歯と同じくらい丁寧にケアをした方が良いでしょう。
銀歯の虫歯の注意点
・自分の歯と銀歯の「境目」に磨き残しができやすい
・被せ物の銀歯の治療を行った歯は痛みを感じにくいので気付きにくい
・レントゲンでは銀歯の内部が映らない
・銀歯は錆びることがある
・自分の歯と銀歯をくっつける接着剤は溶けることがある
・5年から8年を目安に銀歯のやり替えを考える
銀歯を入れた時の注意点
・高さが合わなかったり、噛み合せが強いと歯の根を痛めることがある
・歯ぎしりや噛み合せが強いと噛み合う方の歯を痛めることがある
もちろんお口の中の環境が綺麗であれば10年20年と不具合なく使えている銀歯もございます。
また、歯科医院での定期検診に通うことにより、自分では見ることができなかったり、落とすことのできない汚れを綺麗にすることができます。
お口の中全体の健康を保つことにもなりますので、一生自分の歯で食事を楽しむために一緒に頑張っていきましょう。